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技術士一次試験の対策法(確実な合格のために)

 この記事では、技術士一次試験の勉強法について紹介します。

 技術士一次試験は、日本技術士協会が主催する試験です。技術士一次試験に合格した後、技術士二次試験に合格すると技術士になることができます。この技術士は、機械や電気電子など技術分野ごとに20ほどの部門に分かれています。このうち技術士一次試験は、主にこの各技術分野に関する大学卒業程度の知識を有しているかを確認する試験です*1。この技術士一次試験は、誰でも受験することが可能な試験です。

 今回は、この技術士一次試験の試験の内容やそのための対策法、陥りやすい点について簡単に紹介します*2

技術士一次試験に合格するメリット

 技術士一次試験を受験し、合格するメリットは技術的な意思疎通が行えると明示できる点にあると思います。技術的な蓄積は、各学問に立脚して行われています。このため、これらの学問の知識抜きでは、技術的な内容まで配慮した業務は行えません。技術士一次試験に合格することで、各部門の本当に最低限の知識を持っていることを周囲に明示できます。最低限の知識が共有できることで、スムーズな技術的な意思疎通を行うことができます。

技術士一次試験とは

 技術士一次試験は、技術士になるための一次試験です。この試験の合格後に一定期間の実務経験を積むことで、技術士二次試験の受験資格を得ることができます。以下に技術士試験に関するイメージを示します。

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技術士試験の流れ。技術士一次試験を合格後、実務経験を積むと、技術士二次試験の受験資格を得ることができる。

 技術士一次試験に関しては例年、6, 7月までに受験受付が締め切られ、試験は10月の中旬に行われます。そして、合格発表は12月中旬に行われます。試験会場は、各地方に一つしかありません*3。詳しい日程、試験会場に関しては、技術士協会のHPを参照ください。

https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02009.html 

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技術士一次試験のスケジュール感。試験地の変更期限などには、細かな決まりがある。これらに関しては、日本技術士会のHPを参照ください。

 この技術士一次試験ですが、以下の3つの科目に分かれています。全ての科目で正答率が50%を超えると合格です。
基礎科目:科学一般に関する広い知識を有しているかを問う科目。1時間。
適性科目:技術士法に関する知識を問う科目。1時間。
専門科目:選択した専門科目の大学学部卒業程度の知識を問う科目。2時間。
 上記の3科目のうち、3. 専門科目に関しては、機械や電気電子などの20の部門から、選択して受験することができます。
 また、基礎科目と専門科目に関しては、問題を選択して解答する形式です。基礎科目に関しては、30問中15問選択して解答し、8問正答する必要があります*4。また、専門科目に関しては、35問中25問選択して解答し、13問正答する必要があります。逆に適性科目は、出題される全15問のうち8問に正答しなければいけません。

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技術士一次試験の各科目の概要。
 以下では、令和元年度に技術士一次試験を受験した経験を元に、適性科目、基礎科目、専門科目の順に勉強法について紹介しようと思います。次の表に、各科目の対策の概要をまとめています。
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技術士一次試験、各科目の対策法のイメージ。基礎科目と適性科目は過去問を5年分以上解く対策が効率が良い。専門科目の対策には、大学レベルの教科書を用いると参考書のみよりも早く理解(復習)できる。
*5

適性科目の対策法

 適正科目とは、技術士法に関する知識を問う科目です*6。この科目は、一般常識や大学等で学んできた知識を元に解くことが難しいです。このため、しっかりと参考書、過去問等で対策することが必要です*7。特に、大学で学んだことと同一の部門を専門科目として選択される場合、技術士一次試験の対策を怠って適性科目を落としてしまうことは避けたいです。試験の合格のためには適性科目で出題される全15問に解答し、そのうち8問正答する必要があります。
 具体的な適性科目の対策としては、市販の参考書を読むこと過去問を5年分以上は解くことが挙げられます。技術士試験は、どの科目に関しても過去問から類似問題が出題されます。このため、過去問そのものを解くこと過去問を元に作られた市販の参考書を利用することが対策として非常に有効です。過去問技術士一次試験向けの適性科目向けの参考書の多くは、過去問がついているので、利用するのはどのような参考書でもよいと思います。
 適性科目の参考書としては、具体的には以下のようなものがあります*8技術士一次試験の参考書は、「基礎科目」と「適性科目」が一冊となっていることが多いです。
  

基礎科目の対策法

 基礎科目は、科学一般に関する知識を広く浅く問う科目です。基礎科目は、科学分野ごとに5つの群に分かれています。そして、その5つの各群から6問出題され、その各群の6問から3問解答します。つまり、基礎科目全体としては、30問出題され15問解答します。そして、技術士一次試験の合格のためには、基礎科目全体として8問以上に正答する必要があります。正答率は50%以上必要ですが、出題される問題全体でみると、そのうちの30%以上が分かれば合格できます*9
 基礎科目は、適性科目と比較して、大学までに学んだ知識のみで解答できる設問が多いです。このため、適性科目よりも対策の取っ掛かりが作りやすいです。しかし基礎科目で出題される全範囲を、高校の教科書から復習して網羅することは時間的に現実的ではありません。基礎科目も、適性科目と同様に、過去問から類似問題が出題されます。このため、過去問を中心に対策するのが良いと思います。
 技術士一次試験では、「基礎科目」と「適性科目」が一冊の参考書(過去問付き)にまとまっていることが多いです。このため、適性科目で紹介した参考書を元に対策するのが良いです。

専門科目の対策法

 専門科目は、選択した部門の基礎知識や専門知識を問う科目です。35問出題され25問に解答します。そして試験の合格のためには、13問に正答する必要があります。
 専門科目は、大学までに学ぶ知識が生きる科目です。逆にいうと、選択する部門が大学等で専門とした知識と合致しないと取っ掛かりを作るのに苦労すると思います。専門科目でも過去問から類似問題が出題されます。このため理想的には、大学までに使った教科書を手元において、過去問を解いて行くのが良いと思います。過去問に関しては、日本技術士協会のHPで公開されています。

https://www.engineer.or.jp/c_categories/index02021.html

 専門科目に関しては、技術士一次試験の対策参考書がある部門が少ないのが現実です。また、参考書があったとしても、大学生向けの教科書と比較して質が高いと言えるものも少ない点が難点です。
 以下は、私が受験した「機械部門」に関して専門科目の対策法を紹介します。

専門科目「機械部門」の対策法

 機械部門で出題される内容は、機械工学系の大学で修得可能な内容ばかりです。また、出題される問題のレベルは、機械工学系の大学院入試で出題されるレベルよりも解答しやすいです*10
 このため、機械工学系の大学出身の場合は、過去問を材料力学や熱工学などの分野毎にまとめた以下の問題集を解くのが、対策として効率が良いと思います*11。ただし、以下の問題集には解答に不安を感じる点もあります。このため、解答に納得できない場合は、別に大学等で用いた教科書や授業ノートを参照するといいと思います。

 教科書等が手元にない場合、機械部門を受験する方は、日本機械学会の教科書を利用するとよいと思います*12。機械工学分野の標準的な教科書ですし、流布しているので、近隣の公立図書館や大学図書館で容易に借りることが可能と思います。個人的には大学までで利用していた以下の教科書を参照していました。日本機械学会の大学生向け教科書(JSMEテキストシリーズ)と併せて以下に紹介するので、参考にしていただけると幸いです。

材料力学

   材料力学の基礎的な方程式の導出から解説されている点が特徴である。*13 材料力学の方程式を思い出すために利用した。

機械力学(解析力学

 機械工学の問題は、解析力学ラグランジュ方程式を用いて解く方が容易といった特徴がある。このために、ラグランジュ方程式の表現を確認するためだけに利用した。

制御工学(古典制御)

 技術士一次試験の古典制御では、ブロック線図を変形したり、ラプラス変換したり、安定性の判別をしたりする。安定性の判別の方法を思い出すために利用した。

熱工学(熱力学・伝熱工学)

 伝熱工学に関しては、無次元数の意味の確認や導出の確認のために日本機械学会の利用しました。

流体力学

 流体力学の、ベルヌーイの定理の適用範囲等を思い出すために利用しました。

おわりに

 今回は、技術士一次試験の対策法に関して紹介しました。大学までの専攻を生かした部門を受験する場合は、各科目バランスよく対策することが重要です。特に、適性科目をしっかりと対策することを忘れないことが重要です。一方、大学までの専攻と関連が薄い技術部門を選択する場合は、専門科目の対策に多くの時間が割かれると思います。特に現状、技術士一次試験の専門科目対策のための参考書には、良いものが少なく、大学レベルの教科書を上手に利用する必要があります。

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技術士一次試験、各科目対策法のイメージ
 この記事が、お役に立てば幸いです。

cat2tech.hatenablog.jp

cat2tech.hatenablog.jp

*1:技術士二次試験では、技術を元にした実務経験が問われます。

*2:実際に令和元年度 (2019年度) の技術士一次試験の機械部門を受験し、合格した経験から各点について紹介します。

*3:令和二年度試験の場合、試験会場は、北海道、宮城県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府広島県香川県、福岡県、沖縄県にあります。

*4:正確に言うと基礎科目の場合は、5つの群に関して、それぞれ6問中3問選択して解答する形式です。

*5:次の画像は、私の技術士一次試験の成績通知書です。

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技術士一次試験の成績通知書。結果は合格だった。専門科目は機械を選択した。専門科目、基礎科目は、大学で機械工学を学んでいたり、対策をしっかりとしていたりしたため得点率が高かった。しかし、適性科目は、対策が不足気味であり、合格スレスレだった。

*6:技術士協会のHPには、「技術士法第4章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性」に関して行うとあります。

*7:特に対策せずに技術士一次試験を受けた知人は、専門科目と基礎科目は合格でしたが、適性科目は不合格でした。

*8:一冊目に示した本を個人的には利用しましたが、どれも同じような構成です。

*9:厳密には、各群から解答できる設問数に限りがあるので、全設問のうち30%以上が分かってもの、合格できないことはあります。

*10:具体的には、機械工学系の大学院入試対策参考書である「培風館 四力問題精選」

に記載されている問題より簡単です。

*11:例題100問と類題100問の合計200問程度が記載されています。各分野を思い出しながら解答すると、かなり時間がかかります。

*12:どの教科書を使うか迷ったときには、良い選択肢です。

*13:理解するのには時間がかかるが、導出から理解できると定着しやすい。