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モータトルクカーブの見方まとめ【サーボモータ/ステッピングモータ/誘導モータ】

 モータのトルクカーブ(回転速度-トルク特性、トルク速度特性曲線)の見方を紹介します。

 モータのトルクカーブの見方は、モータの分類によって異なります。そこで、サーボモータ、ステッピングモータ、誘導モータ(商用電源駆動)についてトルクカーブの見方を紹介します。

モータのトルクカーブとは?

 トルクカーブとは、モータの発揮できるトルクと回転速度の関係を平面上にまとめた図です。

 モータのトルクカーブは縦軸がトルク(N・m)で横軸が回転速度(rpm)であることは共通です。

 しかしながら、実はモータの種類によってトルクカーブの意味や見方が大きく異なります

トルクカーブの分類

 モータのトルクカーブは、以下の図のように大きく3つに分けられます*1

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モータトルクカーブの見方の分類(FA/機械システムの観点から)

 サーボモータは、サーボモータの場合のトルクカーブの見方です。サーボモータとは、直流モータ(電圧・界磁電流制御)や同期モータ(ベクトル制御)、誘導モータ(ベクトル制御)のことです。


 ステッピングモータ型は、ステッピングモータの場合のトルクカーブの見方です。


 誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型は、誘導モータ(商用電源駆動)や誘導モータ(V/f制御)の場合のトルクカーブの見方です。


 各モータの違いについては以下の記事で紹介しているので、こちらで参照いただけたら幸いです。

cat2tech.hatenablog.jp

 

サーボモータ型トルクカーブ

 サーボモータは、自由にモータのトルク制御が行えるモータです。

 自由にモータのトルクを制御できることを利用して、モータの回転速度や回転角度を制御することもできます。

サーボモータ型トルクカーブ(回転速度ートルク特性)の見方

サーボモータは、基本的に回転速度にかかわらず自由にトルクを制御できます。

 しかし、部品の耐熱温度や電源電圧の上限によって、発揮できる領域に制限を受けます。

このためサーボモータのトルクは、発揮できるトルクの限界を示したものとなります。

 トルクカーブの内側(下図のピンク色の範囲内)であれば、自由にモータのトルクを制御することができます

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サーボモータのトルクカーブ(回転速度ートルク特性)

ステッピングモータ型トルクカーブ

 ステッピングモータは、回転角度を指定することができるモータです。

 一定時間ごとに角度を変化させることで回転速度を制御することもできます。

 ステッピングモータ型に分類されるモータは、ステッピングモータのみです。

ステッピングモータ型トルクカーブ(回転速度ートルク特性)の見方

 ステッピングモータでは、サーボモータと異なり、意図してトルクを制御することは不可能です。

 このため、指定した回転速度の際に必要なモータトルクが、結果的に図の薄い緑の範囲内に収まっている必要があります。

 薄い緑色の範囲の外では、パルスによって生じる固定子からの磁束にモータの軸が追随できなくなります。この現象を脱調といいます。
 サーボモータと比較した際に、ステッピングモータのトルクカーブを見るときに注意するべきなのはこの点です。

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ステッピングモータのトルクカーブ(回転速度ートルク特性)

 ステッピングモータは原理的に脱調が避けられません。このため、設計段階で、予めどの程度のモータトルク(加速レート)が必要か検討する必要があります*2

誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型トルクカーブ

 誘導モータは、汎用モータとして利用されているモータです。

 商用電源駆動は、一定速度の回転速度でよいときに選ばれる駆動方式です。

 インバータ駆動のV/f制御は、回転速度を大雑把に制御したいときに選ばれる制御方式です。

 誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)では、制御できる項目が少ないです。このため、相対的にトルクカーブが重要な特性となります。

誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)型トルクカーブの見方

 商用電源駆動時の誘導モータのトルクカーブを以下に示します。

 誘導モータはオレンジ色の線の上のみで運転可能です。

 モータトルクとポンプトルクの交差する赤い点のみが定常時に運転可能な点となります。速度を制御することはできません。

 また、定格回転速度も同期回転速度から少しずれます。同期回転速度は、モータの構造(極数)と電源の条件(周波数)から決まるため、設計段階から確定する項目です。

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誘導電動機(商用電源駆動)のトルクカーブ(回転速度ートルク特性)

誘導モータ(V/f制御)の場合のトルクカーブ

 誘導モータ(V/f制御)の場合のトルクカーブの見方は、基本的に誘導モータ(商用電源駆動)の場合と同様です。

 V/f制御では、同期回転数を変化させることでトルクカーブを変化させます。これによって、負荷機械のトルクと交点(定常運転点)が変化します。

 このように定常運転点が変化することで、V/f制御ではモータの回転速度を制御します。

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誘導電動機(V/f制御)のトルクカーブ(回転速度ートルク特性)

まとめ

 サーボモータやステッピングモータ、誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)のトルクカーブ(回転速度ートルク特性)の見方を紹介しました。

 誘導モータ(商用電源駆動・V/f制御)では、あまり自由な制御が行えません。このため、定常的な運転特性を考える際に、トルクカーブが相対的に重要な特性となります。

 また今回紹介したように、誘導モータ(V/f制御)と誘導モータ(ベクトル制御)の違いなど、誘導モータには多くの駆動方式や制御方式があります。これらの違いは以下の記事で紹介しています。

cat2tech.hatenablog.jp

*1:トルクカーブの分類は、私が勝手に分類していますが、おおよそこの3つが理解できていれば、問題ありません。

*2:サーボモータも同様です。